初期臨床研修について

耳鼻咽喉科 研修プログラム概要

理念・特徴

耳鼻咽喉科は五感のうち視覚を除く4つの感覚器を担当し、さらに顔面神経や、発声と嚥下に重要な咽喉頭を得意とする診療科です。会話や音楽を楽しむ、美味しい食事を食べるといった健康的で豊かな生活を送るためには、我々が専門とする臓器が上手く機能していることが非常に重要な意味を持ちます。高齢化社会へと進んでいる日本で、これら感覚器の治療を担当する耳鼻咽喉科医が果たさなければならない役割は、今後ますます大きくなっていくと考えられます。中でも聴覚は、人とのコミュニケーションを図るという大切な役割を果たしています。聴力が低下したたばかりに社会や家族との繋がりが弱まり人と会うのが嫌になるなど、苦しんでいる方が現在でもたくさん存在しています。
当教室は現在10名の常勤医が診療に当たっています。それぞれが専門分野をもち、各領域で日本をリードする臨床が展開できるよう心がけています。須納瀬医師を中心とする耳科手術チームが持つ症例数は全国一であり、他施設からも多くの先生方が手術見学にみえています。この分野で日本をリードし、さらに将来の耳鼻咽喉科を担う人材を作る気概に燃えたスタッフが指導に当たります。余田医師は口腔咽頭の性感染症を専門とし、各地で招待講演を行うなど、第一人者として活躍しています。臨床で接することの多い上気道感染症の取り扱いを学ぶことができます。また、扁桃摘出の症例数はきわめて多く、若い医師にも積極的に手術に参加してもらうことができるため、剥離や結紮など手術の基本を学ぶことが可能です。日常臨床で接する機会の多いめまいは、検査機器も豊富に揃い、当教室が伝統的に得意とする分野です。多くの医師が苦手意識を持つ画像に異常がないめまいや、眼振がはっきりと出ていないめまいの鑑別診断を学ぶことができます。

1.一般目標(一般学習目標)

(1)耳鼻咽喉科でよくみられる疾患に対する病態の理解を深め、治療方針が立てられる

(2)耳鼻咽喉科疾患の外来での保存的治療の概要を理解する

(3)耳鼻咽喉科疾患に対する手術の方法と意義を理解する

(4)簡単な外科的手技について上級医の指導のもとに施行することができる

(5)上級医やコメディカルと協力して患者の治療に当たる

2.個別目標(行動目標)

(1)外来患者の医療面接を行い、患者の訴える症状から疾患を推察することができる。また、診断に必要な情報を患者から得ることができる。

(2)耳鼻咽喉科領域の基本的な解剖を理解し、説明することができる。

(3)鼻鏡、耳鏡、舌圧子などを用い、視診による耳鼻咽喉科領域の基本的な診察ができる。

(4)頸部の触診を行い、リンパ節、唾液腺、甲状腺の異常を見つけることができる。

(5)ファイバースコープにより鼻腔から咽頭・喉頭までを診察し、異常を発見できる。

(6)耳鼻咽喉科領域の感染症の病因となる菌を推定し、適切な抗菌薬を選択することができる。

(7)顕微鏡下に耳の所見をとり、異常を発見できる。

(8)患者の病態を把握し、適切な治療方針を上級医と議論し、適切な結論を導くことができる。

(9)当科で数多く行われている鼓室形成術について手術の意味を理解し、その術式が当該患者に適用された理由を説明することができる。

(10)医療記録、診断書、報告書などを適切に作成することができる。

3.研修方略(指導体制)

(1)当科には耳鼻咽喉科専門医9名、脳外科専門医1名の計10名の専門医がおり、高度な専門性を必要としない一般的な耳鼻咽喉科疾患の治療については、どの医師からも指導を受けることができる。当科ならではの特徴を下記に記す。

(2)須納瀬医師による中耳・側頭骨疾患の指導

1)外来の中耳症例はきわめて多い。上級医との緊密な連絡のもとに外来診療を行い、疾患の特徴を理解するとともに診断方法を学ぶ。
2)鼓室形成術等の中耳・側頭骨手術に助手として参加し、各疾患の特性や術式の意義を学ぶ。

(3)余田医師による口腔と咽頭の感染症

1)外来・入院診療を通して口腔咽頭領域感染症の扱いと抗菌薬の適切な使用法を学ぶ。
2)扁桃摘出術については手術に参加し、組織の剥離法や深部結紮の基本手技について学ぶ。

(4)貞安医師による嚥下障害疾患の指導

1)嚥下障害に対する内視鏡下嚥下機能検査(VE)、嚥下造影検査(UF)を学ぶ。
2)嚥下リハビリテーション、嚥下改善手術、誤嚥防止術の適応について学ぶ。

4.評価方法

(1)感覚器を扱う医師としての基本的な考え方ができているかを評価する

1)患者の抱える悩みや治療に対する希望を正しく把握できるか
2)疼痛の強い感覚器の診察を愛護的に行えるか

(2)外来診療で重要な所見を拾い出し、診断へと導く思考過程を評価する

1)医療面接で十分な情報を得ることができるか
2)視診、触診、フレンツェル眼鏡、耳科用顕微鏡等により患者の所見をとることができるか
3)上級医の指導のもとに鼻咽腔ファイバー、喉頭ファイバーを行うことができるか

(3)手術では

1)扁桃摘出術や喉頭ポリープ摘出術に参加し、手技の基本を習得したか
2)器械の特性を理解して適切な介助ができたか

(4)耳鼻咽喉科疾患の病態を理解し、適切な治療計画を立案できるかを上級医とのディスカッションを行い評価する

5.週間スケジュール

(月) 入院患者診察中耳外来一般外来
(火) 一般外来研修(研修協力病院外来見学)CPAP外来  
(水) 8:00~医局会手術日補聴器外来
(木) 手術日
(金) 入院患者診察中耳外来一般外来
(土) 入院患者診察一般外来