初期臨床研修について
麻酔科 研修プログラム概要
理念・特徴
麻酔科研修とは単に麻酔をかけるだけではない。医療危機管理上、麻酔の理論や技術は必須である。オペ室麻酔管理は、救急蘇生における手技を毎回シュミレーションしているようなものである。これらスキルをマンツーマン指導で受けられる科は麻酔科しか存在しない。気管挿管やバッグマスク換気、人工呼吸理論と設定、昇圧剤や輸液輸血管理、鎮痛鎮静方法の知識など、麻酔から発展し応用できる項目は非常に多く多岐にわたっている。以上の知識とスキルは将来皆さんが何科を志望されても役立つものと確信している。
1.一般目標(一般学習目標)
(1)全身麻酔
1)バックマスク換気ができる。エアウエイが使える。
2)気管挿管ができ、かつ食道挿管との鑑別ができる。挿管困難を予測できる。
3)全身麻酔の過程及び合併症を説明できる。
(2)脊髄クモ膜下麻酔
1) 脊髄クモ膜下麻酔の過程を説明できる。
2) 脊髄クモ膜下麻酔の禁忌、合併症を説明できる。
(3)硬膜外麻酔
1) 硬膜外麻酔の過程を説明できる。
2) 硬膜外麻酔の禁忌、合併症を説明できる。
(4)人工呼吸器
1)従量式と従圧式の違いを説明できる。
2)PEEPの理論を説明できる。
(5)輸血輸液
1)血液製剤の種類と適性、合併症を説明できる。
2)輸液の種類とその選択を言える。
(6)鎮痛鎮静
1)静脈麻酔や吸入麻酔を適切に使用できる。
2)麻薬の種類と適応を決められ、かつ副作用について説明できる。
(7)循環作動薬
1)昇圧薬の種類が言え、適切に使い分けができる。
2)降圧薬の種類が言え、適切に使い分けができる。
(8)モニター
1)モニターに表示されている項目をすべて説明でき、異常値が言える。
2.個別目標(行動目標)
(1)術前
1)術前回診に行き、適切な情報を収集することができる。
2)患者家族に対し、麻酔や合併症に関する説明をすることができる。
(2)術中
1)危機的状況になる前に上級医に報告することができる。
2)鎮痛鎮静、筋弛緩をある程度独立して使用することができる。
(3)術後
1)迅速に術後回診をおこない、合併症の早期発見ができる。
(4)記録
1)正しい麻酔記録が作成できる。
2)処方箋、麻薬伝票その他ペーパーワークを適切に作成できる。
3.研修方略(指導体制)
(1)全体としての指導
1)研修初日、まず1日かけてオリエンテーションを行う。その後1週間、上級医とペアになり麻酔管理を学ぶ。
2)朝の抄読会で最新の知見を学ぶ
3)症例検討会で麻酔法や対処法について振り返って学習する。
(2)個々の指導
1)ケース導入についた指導医からマンツーマンで学ぶ。
4.評価方法
麻酔技術については症例毎に自己評価を行なわせ、直接指導医とスタッフによる評価を受ける。
各科ローテーション終了時には担当科の指導医の評価を受ける。
研修終了時に、スタッフによる評価を受ける。
(1)全身麻酔
1)全身麻酔の導入から退室までスムースな流れで行えるかスキルの総合評価を行う。
2)患者情報のプレゼン、麻酔記録や知識などを包括的に評価する。
(2)脊髄クモ膜下、硬膜外麻酔
1)患者入室から、穿刺、麻酔レベルの評価などを総合的に評価する。
2)合併症や禁忌、局所麻酔量などの知識を評価する。
(3)コミュニケーション能力
1)患者に対して(医療面接)
2)医師同士、ナースやコメディカルに対して(チーム医療の確立)
(4) 各科評価シートを用い、自己評価および指導医によって評価を行う。
5.週間スケジュール
原則として月曜~金曜はam8:00~pm5:00、土曜はam9:00~am12:00(但し終了時間は定期麻酔症例が終了するまで) 上記の時間外の緊急麻酔担当をすることがある。